ドバイ、光と影の狭間で

遊休知美

ブルジュ・ハリファを見上げた瞬間、思わず足がすくんだ。まるで天空へと突き刺さる巨大な槍。超高層ビルには慣れているはずだったが、ここまでの高さになると、恐れにも似た感情が湧いてくる。

昼間のドバイは鋼とガラスの街だ。強い日差しがビル群に反射し、街全体が灼熱の輝きを放つ。EMAARのロゴが至る所に見えたが、その意味はすぐにはわからなかった。ホテルの名前か、それとも政府の機関か。どうやら、不動産・開発を手掛ける企業のようだ。ドバイの巨大プロジェクトの裏には、こうした企業の力があるのだろう。

ブルジュ・ハリファの頂上から見下ろすと、この街は砂漠の中に作られた奇跡のように思える。しかし、奇跡は維持しなければならない。果たして、この煌びやかな世界は、いつまで続くのだろうか。

ふと、お土産屋の隅に妙な青いマスコットキャラが描かれたステッカーを見つけた。ドバイらしくない、どこか間の抜けたデザイン。名前を調べる気も起きず、そのままエレベーターに乗り込んだ。

食事は適当に選んだレストランだったが、思いのほか美味かった。トリュフの香るパスタ、濃厚なチーズとロブスターのグラタン、そして甘い炭酸飲料。どこか人工的な味わいなのに、不思議と満足感があった。ここではすべてが設計され、計算されている。それがこの街の魅力であり、異質さでもあるのかもしれない。

夜になると、街は別の顔を見せた。ブルジュ・ハリファを背景に、無数のライトが煌めく広場に座る。噴水ショーが始まると、水と光がシンクロし、まるで巨大な生き物が踊っているかのようだった。見上げると、世界一の塔は夜空と同化しながら、その存在を誇示していた。

レストランを出ると、ほんのりと涼しい風が通り抜けた。もう少し、この街を歩いてみることにした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました