2013年に日本薬剤師会より公表された「薬剤師の将来ビジョン」という資料があります。
薬剤師の将来ビジョン(日本薬剤師会HP)
https://www.nichiyaku.or.jp/about/summary/teigen.html(ページ内リンク)
薬剤師が国民・社会から真に評価されるには、全ての職域の薬剤師が自らの職能を十分に自覚し、患者さんや地域住民のニーズにこたえることが必要です。
そのような観点から、近未来に向けた薬剤師のあるべき絵姿を、薬局、病院・診療所、製薬、卸、学校薬剤師の各職域ごとに検討し、薬剤師の「将来ビジョン」として策定し、平成25年、日本薬剤師会より公表されました。
引用元:日本薬剤師会HP
この資料の中で著者らは、薬剤師の業務が段階的に発展しているとの見解を示しています。
そしてこれまでの変遷を5つの世代で表し、各々で業務と考えられる内容をまとめています。
最も新しい第五世代については、今後こうあって欲しいという日本薬剤師会の希望が込められていると予想できますね。
追加されたのは、「カウンセリング」「後発医薬品の調剤」「在宅調剤」「モニタリング」「他業種連携」「コンサルテーション」ですね。
資料ではさらに「超高齢社会への対応」「地域包括ケアシステムへの貢献」をビジョンとした長期目標(いわゆる第六世代)についても言及されています。
しかしその一方で厚生科学審議会の議事録では、「現状は第何世代か、正しく今の調剤業務を捉えられているのか」と議論されています。
基本的な部分も含め、調剤業務のあり方については継続的な議論の必要がありそうです。
この記事では、提案された第五世代としての調剤業務を題材に、それらが有益な変化なのか、またそれぞれどのようなかたちで実現しうるのか考えてみます。
第五世代で提示された調剤業務への発展はよいことか??
シズクは、第四世代にまとめられる「調剤」に重点をおいた状況からの変化が必要と感じています。
そのうえで、以下の理由から新たな取り組みの一例として赤枠内の項目には賛成です。
- 利便性ひとつをとってもオンライン処方の需要は高まっており、今後導入の流れは不可避である。薬剤師にはより発展的な職責が求められると予想される。
- 健康福祉の増強を目標し多角的に取り組むうえで、モニタリングを通した主体的な治療への貢献や他業種との連携は不可欠である。
- Society5.0をはじめAI・IoT面での改革が推進されるなか、例えばAI(特に弱いAI)が不得手とするコミュニケーション業務に対する薬剤師の寄与は重要である。
また、病院では有病患者の治療が優先される現状であり、またそうあるべきと思います。
ですので、より生活に近い医療機関として、予防医療をはじめ薬局が果たすべき役割は大きいと考えます。
この立場にたったうえで、それぞれの業務について具体的にどのような施策があるか考察していきます。
カウンセリング、コンサルテーションと他業種連携について
カウンセリングやコンサルテーションおよび他業種連携は、これからの薬剤師にとって実は最も重要視すべき業務ではないかとシズクは考えます。
ヒトである薬剤師がコミュニケーションスキルを活用し、患者さんの健康福祉増進を助けるこれら業務は、6年制へ移行した薬学教育の真価が問われるものと感じるからです。
カウンセリング
カウンセリング業務として、将来ビジョンでは薬や健康のアドバイザーを努めることが挙げられています。
患者さんと深く対話するには、薬局に相応の設備が必要ですね。個人的には、日本コミュニティファーマシー協会が示す薬局の理想像が好例と思います。
簡単な仕切りを設けたカウンターがあるだけでも話しやすい場になるのではないでしょうか。
コンサルテーション
健康ステーションとしての機能やセルフメディケーションの推進は、患者さんに対するコンサルテーションのひとつですね。
予防医療に貢献するうえで要となるであろう役割ですが、それだけに継続するための収益を得る方法をしっかりと考える必要があります。
この点について、シズクはまだまだ知識不足ですね…よい情報があればまたみなさんと共有できれば嬉しいです。
他業種連携
他業種連携について、管理栄養士を雇用し栄養管理・相談を通した健康増進を目指す薬局が話題になりましたね。
栄養バランスの取れた食事を提供するカフェ併設の薬局も現れています。
このような例ができたことで、他専門職との薬局内連携もしやすくなったのではないでしょうか。
またシズクとしては薬局外での連携として、ジムとの協同による運動増進の呼びかけとか面白いと思います。
加えて内外の連携を強め薬局の環境を整えるうえで、機器などの製造メーカーと需要を共有することも重要です。
ロボットを用いた遠隔コミュニケーションが取り沙汰されていますが、薬局においても薬剤師-患者あるいは薬剤師-薬剤師間の交流に活用できることが期待されますね。
モニタリングについて
モニタリングの役割
資料では、副作用や医薬品による医療事故の軽減が薬剤師の重要な役割としています。
そこで各医療チームの中で、薬学的観点からの副作用に関わる事象のチェックと共有、あるいは対策の提言を推進することが主なモニタリングの内容として位置付けられています。
リフィル処方箋
またこれらを薬局独自での業務として発展させた場合、いわゆる「リフィル処方箋」の概念につながるのではないでしょうか。
本制度はアメリカの例が有名ですね。再診や余剰薬剤費に起因する医療費の削減だけでなく、他の医療従事者の負担を軽減する点で効果的な施策です。
導入について10年以上の議論がなされているリフィル処方箋制度ですが、推進にあたり薬剤師による経過観察への信頼性は重要なカギです。
最近ではCOVID-19の件もあり、医療体制の負担軽減に注目が集まっています。
世論の流れも踏まえつつ、平時よりモニタリング業務を通して薬剤師の存在感を高めていく必要があります。
後発医薬品の調剤について
いわゆる「調剤」業務の発展のひとつですね。
シズク的には今のところ薬局での導入が一番感じられる項目です。
同様の作用をもつ薬剤について、患者さん(や国)への負担がより軽減される選択肢を提示するのはある意味当然です。
もちろん副作用面をはじめ、新薬と後発医薬品の差異はチェックし続ける必要があります。
在宅調剤について
在宅調剤、かかりつけ薬局・薬剤師の課題
在宅医療(または在宅介護)を実施している患者さんの自宅に訪問して業務を行うことは、患者さんの負担軽減につながります。
また先に述べたカウンセリングあるいはコンサルテーションを充実させる機会という意図もあるようですね。
「かかりつけ薬局・薬剤師」についても、一人の患者さんの情報を同一の薬局・薬剤師が一貫して把握することで、よりヘルスケア面でのニーズを満たすきっかけになることが大きな目的のひとつだとシズクは考えます。
でも実際には、薬剤師のタスクをどれだけ抑えるかが議論になっちゃった感じがあるよね。。
いま一度、看護師や介護士、ソーシャルワーカーなどとの連携を通じた健康向上の仕組みづくりに注目しても良いのではないでしょうか。
細やかな治療の手掛かり
例えば発達障害をはじめ中枢神経疾患領域では、既にアプリ形式でのデジタルメディスンが世界中で臨床開発されています。
今後認知障害などで在宅医療を受けざるを得ない患者さんを対応する場合、どのように使用するかだけでなく、普段家で使うデジタル機器を用いた治療であれば介護士との情報共有といった業務が必要になりそうです。
シズクとしては、ビュートゾルフのような地域医療ケアの潮流を把握して積極的にアイデアの種を探りたいですね。
さいごに
「薬剤師の将来ビジョン」に対してさまざまな議論が為されています。
今後薬剤師が目指す姿を考えることそのものが重要であり、個人レベルでも積極的に意見を交わしていくべきだと思います。
例えば上記の厚生科学審議会でのコメントには厳しいものもありましたが、意見の本質は「全ての薬剤師が主体的に薬局での役割を考え、実行すべき」という提案であるとシズクは捉えています。
国民全体の健康福祉にとってより良い将来をつくる参考意見と前向きに捉え、薬剤師の中で改善を重ねる意義は十分あると存じます。
今、自ら価値を創出することが薬剤師に求められていると感じます。より具体的な案を提げて、頼もしい薬剤師像を提案できると良いですね!
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