異国のポタージュ

遊休知美

12月のミュンヘンは、昼でも沁み入る寒さだ。ヴィクトアリエンマルクトに着くと、広場のテントや木製の屋台が、冬の寒さに負けじと温かい飲み物や料理を売っていた。市場の片隅で、ふと目に留まったのは「Kürbissuppe(かぼちゃのスープ)」と書かれた黒板。ちょうど手がかじかんでいたし、温かいものが欲しかった。

注文すると、小さな陶器の器に入ったスープが差し出された。見た目は、日本で飲むかぼちゃのポタージュと変わらない。淡いオレンジ色の表面には細かく刻まれたチャイブが散らされ、湯気が立ち上る。しかし、一口含んだ瞬間、思わず目を見開いた。甘くない。それどころか、スパイシーな香りが鼻を抜け、まるでカレーのような風味が舌に広がった。

 後で調べてみると、南ドイツやオーストリアのかぼちゃスープには、ナツメグやクミン、ジンジャー、時にはチリを加えることが多いらしい。さらにココナッツミルクやオレンジジュースを加えるレシピもあるという。ドイツ料理といえば、ソーセージやジャガイモ料理の印象が強かったが、こんなエスニックな風味が根付いていることに驚いた。

スープを飲み干し、トレイを返しながら思い出した。袋の中には、柔らかいモヘアのぬいぐるみがひとつ。つい衝動買いしてしまった。ミュンヘンの冬の寒さと、どこか懐かしい温もりを、このシュタイフとスープが同時に運んできたような気がした。

 数週間後、日本に戻った私は、あるカフェで同じスパイスの効いたかぼちゃのポタージュを見つけた。店主はカナダ人だという。試しに注文すると、ミュンヘンで味わったものと驚くほどよく似ていた。

異国で出会った味が、思いがけない場所でまた巡り合う。それは単なる偶然かもしれないが、旅の記憶がふと現実とつながる瞬間に、私はいつも特別な感慨を覚える。

かぼちゃのポタージュの湯気の向こうに、あの日のミュンヘンが見える気がした。

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