【身近な社会貢献】「私」と社会が資本を出しあえば、幸せな未来を叶えられる社会ができつつある

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シビックテック(Civic Tech、Civic Technology)という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。

社会全体の利益のために何らかの技術を活用することを指した単語です。

現在では一般に情報技術つまりITを指す場合が多く、日本でも数年前からシビックテックへ取り組む公共機関や企業が現れています。

そんな中2020/4/29に、とあるシビックテックのデータセットがNature系列である「Scientific Data」誌より公開されました。

10秒でチェック!記事のポイント
・公共にとって役立つこととして、市民主導でアイデアや技術を提供できる様々な仕組み、つまりシビックテックが整備されてきた。
・シビックテックのひとつに「Goteo.org」や「LOCAL GOOD YOKOHAMA」といったクラウドファンディングがあり、個々人が低い障壁で社会貢献へ取り組める。

この論文ではシビックテックのひとつとしてクラウドファンディングに着目しており、実際にクラウドファンディング事業を提供しているバルセロナの「Goteo.org」というサイトを対象に、掲載された487の投資案件を独自の分類でまとめています。

実は社会貢献を目的としたクラウドファンディングでは、「賛同者が集まらず実現化しにくい」という課題を抱えています。

これに対し近年「マッチファンディング」という、賛同者の数に応じて政府や財団といった他機関が追加出資する新たな形態が生まれており、課題解決へのアプローチとして注目を集めています。

そこで本論文では、Goteo.orgを例にマッチファンディングの有用性を研究するきっかけとなるデータを研究者たちへ共有したのです。

転載元:https://ja.goteo.org
「Goteo.org」のトップページ。スクロールすると受付中の投資案件が並んでいます。

シビックテックって単語すら知らなかった…
クラウドファンディングってことは、ここに書かれた取り組みを通して個人レベルで社会貢献に参加できるってことなのかな?
シビックテックが何かを理解したうえでこの論文を読んでみたいなぁ。

ヒロシ
ヒロシ

ヒロシ君と同様、シズクも論文の背景について知識不足でした。

そこで本稿では、シビックテックについて簡単にまとめたうえで、この論文の主張したいことを紐解いてみたいと思います。

また併せて日本での現状を取り上げ、最後に一個人としてシビックテックを通じてどのように社会貢献できるかアイデアを提案しようと思います。

シビックテックの成り立ちと役割

シビックテックを勉強するにあたって、日本総研さんがとてもわかりやすい日本語レビューを公表されていたので参考にしたいと思います。

公共分野におけるデジタル変革をいかに進めるかーアメリカにみるシビックテックの動向と課題ー
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=30663

アメリカで具現化した「公共の利益に貢献したい」という思い

シビックテックの概念は、2000年代はじめにアメリカで発生しました。

これはあくまでシズクの印象ですが、新薬の治験ひとつをとっても、自分自身が社会へ積極的に貢献する意識が高い国民性な気がするので、「公共の利益に貢献したい」という意志がかたちになりやすい土壌だったのかもしれません。

そのうえで上記レビューによると、技術革新が進みITやAIといった情報工学が普及し、政府や公共機関より提供されたオープンデータを活用可能にな離ました。

この2つの要因が背景となり、市民がITを活かして社会の課題を解決する、いわゆるシビックテックという取り組みが出現したと考察されてます。

シビックテックに求められる役割とは??

社会の課題解決のために生まれたこのシビックテックですが、どのような機能を持つことで実際に力となるでしょうか。

現在では既にシビックテックの実例として多数のサービスが出ていることから、これらを参考にレビューでは代表的な4つの機能を抽出しています。

”…シビックテックに期待される効果としては、
1行政・公共サービスの効率化や利便性の向上、情報の可視化、
2市民の地域社会への主体的な関与・参加の促進、
3行政の透明性や説明責任の向上、
4新たなビジネスの創出、などが挙げられる…”

引用元:公共分野におけるデジタル変革をいかに進めるかーアメリカにみるシビックテックの動向と課題ー

1や3について、現状だと行政主導で進めるのが一般的ですよね。

しかし、ITによって市民が実際にどのような悩みを持っているかという視点から課題を探り出すことができれば、より効率的に公共のリソースをあてがうことができそうです。

また2については、提示された課題へ直接的に市民が参画し対処するプラットフォームをつくることを示唆しています。

シビックテックにおけるクラウドファンディング

シビックテックの分類とクラウドファンディングについて

それでは、シビックテックには具体的にどのような種類があるのでしょうか。

以下の表をみると、大きく「行政がどれだけわかりやすく市民へサービスを提供できるか」と、「市民がどのように社会貢献できるか」という2つの視点について、それぞれの取り組みを助けるツールがあるようです。

転載元:公共分野におけるデジタル変革をいかに進めるかーアメリカにみるシビックテックの動向と課題ー

「クラウドファンディング」という単語が出てきましたね!

希望者が直接投資しあって必要な資金を調達するクラウドファンディングについては、「Campfire」をはじめ試してみた方も多そうです。

「今市場にないけど、こんな商品あったら買いたいなぁ…」とか、「好きなバンドがこんなチャリティやってるんだ!自分も役に立てそうだな」いう案件が見つけられたりしますよね。

ことシビックテックにおいては、公共の利益になる取り組みに対して、個々人が投資により貢献しあって実現化することを指します。

その実例として、はじめに紹介したGoteo.orgが今回論文で取り上げられました。

マッチファンディングという、新しいクラウドファンディングのかたち

ただ社会貢献を目指したクラウドファンディングの実態として、賛同者が集まらず実現化しにくい場合が多いようです。

やはり自分の利益になるのが間接的なので、出資をためらう人が多いのでしょう。そこで生まれたのが、マッチファンディングという新たな形態です。

マッチファンディングでは、起案者が集めた出資者数あるいは金額に応じて、政府や自治体といった公的機関、財団や企業などから助成金が追加されます。

したがって、個人にとっては出資額がより少なくてすみますし、機関にとってもニーズの高い課題へ出資しやすいとお互いにとってメリットのある方法です。

実際にGoteo.jpでもマッチファンディングを採用する案件が出ており、論文内でも95件がデータセットに含まれています。

シビックテックと、クラウドファンディングの位置付けとか動向は簡単に理解できたかな。そろそろ論文を見てみよう!

ヒロシ
ヒロシ

Scientific Data誌で発表された「Goteo.org」データセット

Goteo.org civic crowdfunding and match-funding data connecting Sustainable Development Goals - Scientific Data
Measurement(s) crowdfunding campaigns • Donation Technology Type(s) Goteo digital platform • digital curation Machine-accessible metadata file describing the re...

なぜ「Goteo.org」のデータを対象としたか??

本論文がGoteo.orgを選定した主な理由は、公共の利益を目的とした(=シビックテックとしての)、オープンデータなクラウドファンディングのひとつであったからです。

加えてGoteo.orgの特徴として、出資者が検索する際に各案件の目的を示しているのですが、研究対象としてデータ解析する際はより一般的に周知された分類へ自動的に変換できます。

そこで本論文では、2015年に国連で提言された「持続可能な開発目標(SDGs)」17個に分類したのです。

これまでにもSDGsの各目標の関連性や、場合によってはクラウドファンディングの効果も含め研究した知見はありましたが、より透明性が高いシビックテックを対象とした研究が可能となった点で、本データセットの有用性は高いと著者らは考えています。

「クラウドファンディングの方法が結果へ及ぼす影響」を知る手掛かりになる

この文献において特筆すべきアイデアは、487の投資案件から得られたデータについて、

  1. 一般的なクラウドファンディングかマッチファンディングか
  2. SDGsの17個の目標のうちどれをゴールとするか

で切り分けたことです。

したがってこのデータセットをもとに解析を進めれば、一般的なクラウドファンディングまたはマッチファンディングのどちらを選ぶかで、それぞれの目標をもつ案件ごとにどのような結果を示すか類推するヒントが得られそうです。

シズク
シズク

例えば、「◯◯を目標とした案件なら、マッチファンディングの方が成功につながりやすい」といったことがわかるかもしれません。

起案者にとっては、自治体といった他機関との連携という骨の折れる作業を行うメリットがあるか判断する手掛かりになりそうですね。

しかもSDGsという周知されたゴール像ですので、他プラットフォームとの比較もしやすいです。

今後は本データセットや他の情報も併せて解析することで、各地域ごとでどの課題に対しどの資金調達方法で対策を進めることが適切か判断しやすくなり、個々の社会貢献へ参画する機会が増えるのではないでしょうか。

日本におけるシビックテックの取り組み

せっかくなので、日本にあるシビックテックのうちシズクが興味を持った事例を挙げさせていただきます。

海外を参考に日本でも先進的な取り組みを行う地域はありますが、やはり認知度が低く全国各地への普及が第一の課題でしょうか。

ただ「LOCAL GOOD YOKOHAMA」といった実例を見ると、出資者が集まり成立した案件は多いようです。

LOCAL GOOD YOKOHAMA
横浜市におけるシビックテックの産官学連携プラットフォーム。
「Goteo.org」とも連携しており、クラウドファンディングの実例としてシズク的にかなり面白い活動です。

Code for Japan
日本におけるシビックテックの発展において初期より活動されている団体です。
行政や企業へ人材派遣されており、普及活動や全国各地での取り組みも盛んなようです。

地方で求められる「広義のシビックテック」って?
地方でのシビックテックのやり方について、実例とともに記事でまとめられています。
LINEの利用といった簡単な取り組みから、シビックテックを浸透される意義を説かれています。

本稿執筆時点で「Goteo.org」をみると、複数の医療機器メーカーが協同してパンデミック対策のマスクや防護服などをつくる資金を募る案件が挙がっており、既に希望額を大幅に超えた寄付金が集まっているようです。

シズク
シズク

これを参考に日本でも各地で同様の取り組みが出てくれば、一人ひとりがより医療従事者の手助けをしやすくなるかもしれませんね。

さいごに

シビックテックのひとつとして、クラウドファンディングのプラットフォームや仕組みは日々進化しています。

社会に解決すべき課題があるものの解決策がわからないときに、クラウドファンディングで出資するというアクションを気軽に起こせる可能性はすぐそこに転がっています。

シズク
シズク

シズクがもし起案するなら、以下の記事でもお話しした認知症カフェのコミュニティをつなぐオンラインツールを実現したいですね!

もちろん、「誰かの解決策に乗っかるより、自分のアイデアでお金を集めて社会を良くしたい!」という方もいると思います。

ぜひここで紹介したプラットフォームを活用してアイデアをかたちにしたり、あるいはプラットフォームそのものの動向や作成について興味を持っていただければ嬉しいかぎりです。

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