ザグレブへの旅行では、街に入るのも出るのも飛行機を用いた。
にも関わらず、ザグレブ中央駅(Zagreb Glavni Kolod Train Station)の写真が残されているのも不思議な話だ。
このザグレブ中央駅のすぐ前には広々としたトミスラヴ広場がある。
夕食後にあてもなく散歩を始めた私達がここへ辿り着いたころには、辺り一面すっかり暗くなり、街灯の優しい明かりが広場を橙色に照らしていた。
地図を見てはじめてそこが駅舎だと知った私達は、旅先での好奇心に惹かれるまま中へと入っていった。
1892年に開業したザグレブ中央駅は、以降1990年代や2000年代に大規模改修を受けながら今日までその美しい姿を残している。
どこからともなくやってきては行き交う人々を見ていると、どれだけの人間がこの建物に訪れたのだろうかという考えが浮かんでくる。
そんな歴史に思いを馳せながら外へ出ると、広場のもとにはいつの間にか多くの人々が集まっていた。
待ち合わせをする人、談笑する人、のんびりくつろぐ人。
突然、如何にも近未来的なフォルムの路面電車が目の前を通り過ぎていく。
何気ない瞬間。過去から未来、様々な想いが交錯するこの場に出会したことが、あたかも運命の導きであるかのように感じられた。
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