ストレスで終われる忙しい日々の合間、自宅で羽を伸ばしてゆっくり休める時間はとても貴重なものです。
しかしながら特にすることもなく家に居続ける時間が増えると、孤独や運動不足といった異なる種類のストレスを感じるようになります。
当ブログでは以下ページの中で、外出自粛での孤独による精神的負担の危険性を取り上げました。そして解決策の一例として、オンラインで他者と関わりを持つ手段を持つことを提案しました。
他方で自宅にいながらストレス解消できる手段として、近年ではガーデニングあるいは家庭菜園が注目されつつあります。皆さんもTwitterなどで話を目にされたことがあるのではないでしょうか。
実際にシズクも今年の4月から家庭菜園をはじめており、育てやすいと評判のトマトから各種ハーブ、さらに最近ではラベンダー等のお花をホームセンターやAmazonから迎え入れ、万全の準備を整えつつあります。
確かに、太陽を浴びながら花とか野菜とかをお世話するのって気持ちよさそうよね!
「植物のお世話に没頭できて生活リズムが整う」「植物や土に触ることで落ち着く」「外へ出ることで太陽光を浴びたり風を感じて元気になる」など気持ちの面で良い影響が多々あります。
加えて、科学的根拠からも精神へのガーデニングの効能が明らかになりつつあります。
そこで本稿ではガーデニングが精神状態へ与えるメリットについて、検証の歴史から科学的根拠を上げたうえで、併せて参考にしたい方法論をまとめておこうと思います。
1812年から検証されてきた抑うつとガーデニングとの関係
そもそも抑うつとガーデニングとの関係についてはいつから研究されはじめたのでしょうか。
精神科ケアにおいて18世紀から始まった(作業療法を含む)解放治療のなかで、アメリカのBenjamin Rush医師が園芸を活用した療法について自身の著書で示しており、これが起源とされています。
園芸療法 ー植物との穏やかな関係が与えるもの
(上記リンクは論文紹介ページ)
1798年ベンジャミン・ラッシュ(Benjamin Rush 1745-1813)が彼のイギリス留学( 1760‐69年)の間に学び、自国で実践した戸外作業を伴う解放治療の効果について報告した。その後各地で実践が続けられたが、二つの大きな変化があった。1)園芸主体の療法の確立 2)療法対象者の多様化である。
引用元:園芸療法 ー植物との穏やかな関係が与えるもの
本取り組みにおいて、他の治療プログラムから独立した園芸作業の有用性が示されはじめました。
以降はいわゆる「園芸療法」の体系化が進み、1960年にはこの療法プログラムをまとめた教科書(Therapy Through Horticulture)が出版されました。今日のアメリカでは「園芸療法士」の資格が確立されています。
この流れとともに現在では複数のグループにより、実際に園芸作業が精神科ケアに有効であるか科学的な検証が進められています。
研究結果からみるうつ病態へのガーデニングの効果
それではここから、うつ病態へのガーデニングの効果について調べた研究をいくつか取り上げさせていただきます。
アウトプットとしての有効性を調べた研究と、想定される作用メカニズムの研究に分類しました。
抑うつ状態への有効性についてのメタ解析
東京大学の研究グループから出されたこの論文では、ガーデニングの健康への作用を調べた76の既存文献をまとめて再解析(メタ解析)を行いました。
結果、うつ病や気分障害といった精神疾患患者の健康や幸福を表す指数について、治療群と未治療群やガーデニング前後で有意な差異が見出されました。
ただし本論文では、具体的にガーデニングのどの要素が精神疾患の改善に寄与しているかまでは明らかになっておりません。
参考までに、著者らの考察としては以下の要因を可能性に挙げています。
- 自然との直接的な触れ合い
- ガーデニングを通した運動の増加
- ガーデニングを通した他者とのコミュニケーション
- 野菜や果物中心の食生活への関心
著者らのいうように、4番目に至ってはかなり間接的に感じますね。笑
それでは次に、化学的な身体への作用を調べた研究を見てみましょう。
(原著論文)
Gardening is beneficial for health: A meta-analysis.
抑うつ状態への作用について想定されるメカニズム
植物からとれた天然成分の人体への作用については、漢方薬をはじめ数多く研究されていますが、ガーデニングそのものの作用機序という視点から行った研究は、やはりこれらと比較すれば多くありませんね。
しかしながら以下に記載した文献では、ガーデニングの精神面への作用がどのような化学的メカニズムによるものかを明らかにする手がかりが示されています。
以下2報では非臨床研究において、土中の細菌(Mycobacterium vaccae)由来の脂質が、炎症モデル動物におけるストレス由来の炎症性サイトカインを抑制することを示しております。
他方で生体内でのストレス応答を調べた例として、うつ病態発現への寄与が知られるコルチゾールがガーデニングにより抑制されることがわかっています。
もちろんこれらの報告に関連があるかはまだわかりません。ただ少なくとも精神疾患患者において、ガーデニングが心に良い影響を与える可能性は、メタ解析で支持されています。
今後さらなるメカニズム研究が進められ、ガーデニングの効果が解明されていくのが楽しみですね!
ガーデニングによるストレス緩和にチャレンジする上で参考にしたい方法
ここまではガーデニングのメリットを示す客観的なデータを紹介してきました。それでは、実際に精神面のケアを意識しつつガーデニングへ取り組むには何を参考にすればよいのでしょうか。ここでは、シズクが調べるなかで興味を持った2つの方法論について以下に記載しました。
園芸療法
先にも出てきたこの園芸療法ですが、国内で認知されはじめたのは1980年代からです。
日本園芸療法協会のHPで、園芸療法の詳細についてまとめられています。ガーデニングを通して健康にどのようなメリットがあるか、実際にどう実施すればよいかを体系立て、必要とされる方々に伝えておられるようです。
メディカルハーブ
こちらは、育てた植物の作用からの視点ですね。例えば自宅で育てる植物を選定するうえで参考になるのではないでしょうか。
手に入りやすい15種類のハーブを題材に、メディカルハーブの安全性、有用性、使い方などハーブを楽しむために知っておきたい基礎知識を身につける検定です。
引用元:日本メディカルハーブ協会
さいごに
本稿では科学的根拠と方法に焦点をおいてまとめましたが、ガーデニングの心へのメリットについては、他にもいろいろな角度から考察された情報があると思います。
ただ、「やってみたいな」と思ったら、まずは自分が楽しいやり方でやってみるのが一番心にとってよいことだと思います!
シズクものんびりガーデニング続けていきたいと思います!!
まずは種から芽が出るのを目標にします…笑
コメント
[…] 今では古典的な認知行動療法にとどまらず、陶芸療法や園芸療法といった様々な形式の作業療法が確立されつつあることから、患者さんがよりいろいろな治療法を体験できるきっかけになるのではないでしょうか。 […]