ミュンヘンの夜、青いロボットと名探偵

遊休知美

旅の夜には、どうしてこうも思いがけない出会いがあるのだろう。

ミュンヘンのアパートメント、壁にぴたりと収まったテレビを何気なくつけると、奇妙な青いロボットが画面に映っていた。大きな目、四角い口、ぎこちないがどこか愛嬌のある動き。しばらく目が釘付けになったが、どうやらこれは『フューチュラマ』というアニメらしい。ロボットの名はベンダー。人間らしく酒を飲み、シニカルなジョークを飛ばす。セリフはドイツ語だが、キャラクターの動きとテンポだけで十分に笑える。

「ドイツ語は長い単語が多い」とよく言われるが、それを実感したのはこのアニメを見ていたときだ。セリフのスピードが速く、長い単語が次々と押し寄せる。英語の作品を吹き替えたものだから、余計にそう感じるのかもしれない。

画面が暗転し、次に現れたのは、見覚えのあるキャラクターだった。大きな瞳、黒髪、鋭いまなざし。「ALL TRUTH」と画面いっぱいに表示される。

かの名探偵がドイツのテレビに映っているのは少し意外だったが、調べてみると、彼の知名度はヨーロッパでも高いらしい。論理的な推理とスリリングな展開が、言語の壁を越えて人気を博しているのだろう。

考えてみれば、アニメは日本文化の輸出品のひとつだ。ここドイツでも、日常の一部として受け入れられている。かつてはゲーテの文学やクラシック音楽を求めて訪れた人々が、今では日本のアニメに触れている。旅の風景は時代とともに変わるものだが、異国の地でなじみのある作品に出会うと、不思議な安堵感を覚える。

ミュンヘンの静かな夜、青いロボットと名探偵がうつりゆくテレビの前で、私はのんびりと夕食のスープパスタに口をつけた。

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