宮崎の片隅、名もなきスーパーにて

遊休知美

旅の途中、宮崎市の郊外でふと目についたスーパーに立ち寄ることにした。派手な看板もなければ、特別な名物があるわけでもない。ただ、どこにでもあるような地方のスーパー。その駐車場には、白いプリウスが静かに佇んでいる。地元の人たちが、まるで自分の庭にでも帰るように、何のためらいもなく足を運んでいた。

入り口をくぐると、ひんやりとした冷気が肌を撫でた。惣菜コーナーに足を向ける。そこで目にしたのは、どこか奇妙なネーミングの弁当たちだった。「ビリー南蛮逆ギレ弁当」「いきなり鬼パドル前乗り弁当」「安全確認絶叫弁当」――どれも、単なる弁当の枠を超え、なにか物語を秘めているようだった。

「ビリー南蛮」とは何なのか。ビリーとは誰なのか。安全確認の必要性とは、では危険圏のそれはあるのか。考え始めるときりがないが、その思考の迷路に迷い込む前に、気づけば手が弁当をつかんでいた。これはもう、ネーミングの妙技に負けたのだ。

さらに惣菜コーナーを見てみると、「サバ&厚揚げ甘辛4の字固め」なる一品があった。4の字固めといえば、プロレスの足関節技である。なぜサバと厚揚げがそんなにがっちり固められねばならなかったのか。その理由は分からないが、ともかくパックを手に取った。食べてみると、甘辛い味付けが絶妙で、確かにがっちりとした味の構成をしている。これはこれで理にかなっているのかもしれない。

レジで会計を済ませ、外に出ると、すでに夕暮れが街を包み込み始めていた。駐車場では、買い物を終えた主婦が軽自動車のエンジンをかけ、どこか遠くへ走り去っていく。この店に立ち寄ったことを、彼女たちは翌日には忘れてしまうかもしれない。でも、旅人である自分には、このスーパーが奇妙な印象を残した。

何の変哲もない地方のスーパーが、その土地の空気や暮らしを何気なく映し出している。名もなき店の、名もなき弁当たち。そのひとつひとつが、旅の記憶にこうして刻まれている。

食の森うめこうじ・ながの屋各店舗案内
宮崎のスーパーマーケット うめこうじ・ながの屋 各店舗のご紹介

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