イスタンブールに着いた日の夜は、あいにくの雨だった。
「軽くパンとかで済ませてもええけど、どうかな?」
「だいぶお腹も空いてきたし、できればしっかりめのトルコ料理を食べてみたいなぁ。」
「了解!ほな近くにポッタリーケバブていうのが美味しそうなお店あるから、ちょっと見てみよか!」
ネット上で何やら壺から出てくる不思議な料理を見つけた私達は、まだ見ぬ本場のトルコ料理に期待を膨らませながら傘を手に取った。
そうして礼儀正しくて気さくなフロントマンと挨拶を交わし、少し肌寒くなってきた路地へ繰り出したのである。
日本でケバブといえば、ぐるぐると回転する大きな肉塊が頭の中に浮かんでくるが、実際は魚や野菜など焼いたものを総称する単語のようだ。
つまりポッタリーケバブとは、文字通り陶器に入った具材を丸ごと火にかけ、器を叩いて割り中身を取り出していただく料理である。
その何とも好奇心を掻き立てる絵面に惹かれ、雨足が強くなる中、私達はお目当てのレストランに入っていった。
結論から言えば、ポッタリーケバブは高くて手が出せなかった。
値段を見た瞬間、内訳に占めるアトラクション料が気になってしまい、どうにも腰が引けてしまった。せっかくの海外旅行ではあるが、同時にまた貧乏旅行でもある。
なるべく澄ました顔でメニューを手に取り、脇に書かれた食材を頼りに見慣れない名前の料理を2人で物色する。
いつになく慎重な議論の末、豆のスープ、松の実が詰まったナスのトマト煮、バターで炒めた牛肉のケバブを選んだ。
このように一期一会で選んだ食事が、往々にして記憶に残るような素晴らしい出会いとなるのは、なぜなのだろうか。
帰国して随分経った今でも、ケバブサンドの屋台を見かけるたび、あの何とも言えない異国の美味が蘇ってくる。
私達は食べることができなかったのですが、今見ても美味しそうなポッタリーケバブ!
元々はカッパドキアの郷土料理とのことですので、訪れる機会があればぜひご賞味くださいね。
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